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2020.04.01
保護継電装置は、発電所や変電所設備の経年とともに老朽化しており、保護要素の特性劣化の顕在化や修理部品の生産中止などから保護継電器は改修が必要な時期を迎え始めています。
特に一般の水力発電所では、運用開始後60年以上経過した発電所が2022年には6割以上に達してしまう状況となっています。
一方で、保護継電器は技術進歩が著しく、当時設置した電磁機械式の保護継電器は、保守対応が困難な状況となっており、設備更新は必須の状況となっています。
このような状況の中、保護継電器の設備更新にはお客さま設備形成の実態から、以下の課題が顕在化しています。
・保護継電器盤内には、特性劣化している継電器と使用可能な継電器が混在しており、保護継電器盤の全てを更新すると無駄が発生してしまう。(駆体、盤内配線など)
・保護継電器盤の更新設置スペースが狭く、新たに盤を作って更新するのは困難である。
・元位置での更新工事となると作業工程が長くなってしまうが、特に水力発電所では溢水を可能な限り抑えたいため、長期間の停止は回避したい。
・これまでの部分改修工事の中で,改修箇所や配電盤内配線が完全に管理されていない可能性がある。
上記の課題の他に、今までは、既設盤や保護継電器の更新や内部ロジックの改修は、設備を供給したメーカのみが改修することが一般的でした。特に保護継電器の内部ロジックや処理条件の変更は、製品の保証などの面からメーカーへ個々に発注しているのが実状で、配電盤内のシーケンスを大幅に改修するものについては補助継電器タイマーなどとの設計を維持するため、事前設計検討を含めると高額な改修になっていました。
IEDは、多機能で柔軟性に富んだ保護・制御・記録・計測機能を一体化した汎用デバイスを、ユーザーがそれぞれの用途に応じて機能をセッティングし、使用できるような汎用化された装置です。
このため、従来補助リレーやタイマーリレー等の制御ケーブルで接続・構成していたシーケンス回路をIEDの中でソフト的に構築できるため、大掛かりな更新工事が回避できるとともに、現地作業の効率化が図られ、停止時間も極小化することが可能となりました。
また、複雑なシーケンスを現地確認することがなくなるため、設備の保安、信頼度、安全性も同時に向上いたしました。
→詳細は「GE製IED/多機能一体型保護・制御装置」のページをご覧ください
レトロフィット工法とは、上記のようなIEDの特長を活かし保護機能と制御機能(シーケンス回路)をソフト集約し、現地にて特性劣化している保護継電器のみを交換し、健全品は活用する無駄のない設備更新工法です。
これらの工法は、IED技術の有無に関わるため、IEDを供給でき、かつそれらを施工できるTDS独自の技術となっています。
レトロフィット工法によるメリットをまとめると、
・配電盤の全更新とならないため、改修ロス(盤駆体の活用、配線活用)を抑えられる
・元位置での更新により設置スペースなどの課題が解消される
・作業工程が大幅に短縮され、停止期間も極小化できる
・配電盤内配線が整理され、設備把握が容易となる
・ディジタル化により、保護機能などの信頼性が向上する
・IEDにより保守・点検などの簡素化及びモジュール交換による早期復旧が可能となる
・更新工事の依頼先に機器供給メーカー以外の選択肢が増えた
澁澤賞は、電気保安行政の礎を築いた故澁澤元治博士が文化功労者として表彰を受けられた栄誉を記念するために昭和31年に設けられた賞で、広く電気保安に優れた業績を上げた方々に毎年贈られており、民間で唯一の電気保安関係表彰として各界より認められている大変権威ある賞です。
今回の受賞は、これまで全面更新が一般的であった保護継電器の更新工事を、IED(多機能型保護継電器)の活用と、現地で改修する「レトロフィット工法」を組み合わせることによって大掛かりな更新工事が回避でき、工事費の低減と工期および停止期間の短縮を実現した点を評価していただいたものです。