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【電気の基本】特別高圧とは?低圧・高圧との違いもわかりやすく解説
2023.03.23
特別高圧の電気設備は、工場や商業施設など大量に電気を使う場所で使用されていますが、高い電圧であるがゆえに、リスクなく安全に運転するための工夫が各所にちりばめられています。
今回は、電気設備の中でも電気を使うためになくてはならない代表的な機器である「変圧器」と「遮断器」を中心に、特別高圧設備の特徴をご紹介していきます。
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変圧器は、発電所でつくられた高い電圧の電気を、使用しやすい電圧に下げてくれる重要な機器です。「油入変圧器」「モールド変圧器」「ガス絶縁変圧器」などの種類がありますが、現在、特別高圧用の変圧器で最も多く使われているのは「油入変圧器」です。
油入変圧器は、内部にある鉄芯と巻線から放出される熱を冷却するために、絶縁性が高い油でタンク内が満たされた構造をしています。
油入変圧器の冷却方式には、油の自然対流で冷却する「自冷式」、油をラジエーターに循環させてさらに外部に設置するファンで強制的に冷却する「送油風冷式」、油を熱交換器に循環させて水で冷やす「送油水冷式」などがあります。
みなさんが普段お使いになっているパソコンに付属しているファンは、内部の熱を排出し、半導体などを冷却するためのものですが、同じように変圧器も、その内部の熱を冷やす必要があります。
例えば、電柱の上にある高圧用の変圧器も、ケースの外側にギザギザのラジエーターを付けて放熱しています。
しかし、特別高圧用の変圧器は、特に大量の電気を流すため、放出された熱をもっと急速かつ効率的に冷却することが求められます。
※巻線の接続などは、表現上デフォルメしております。
上図のように、変圧器の内部の絶縁油を、ポンプで変圧器本体とラジエーター間を循環させ、さらにファンによりラジエーターから空気を外に送り出し、冷やしています。
また、地下式変電所では、地下室に熱気がこもらないよう水を使用して冷却する「送油水冷式」を採用しているところもあります。
特別高圧用の変圧器は非常に高い電圧を使用していますので、絶縁や冷却などの役割を担う絶縁油の性能は非常に重要です。
絶縁油は空気と触れたり湿気があると、すぐに劣化して絶縁性能が低下してしまい、変圧器内部でショートしたり漏電するおそれがあります。そのようなリスクを防ぐために、絶縁油の交換や分析を行う必要はありますが、そもそも変圧器自体に絶縁油の劣化を防ぐ工夫が施されていることをご存じでしょうか?
変圧器は、空気と直接触れない密閉構造にして、さらに変圧器の温度変化による絶縁油の体積の膨張・収縮を吸収する仕組みが施されています。
その方法は様々ありますが、特別高圧の設備で主に採用されているのが「隔膜式密閉方式」です。
隔膜式密閉方式は、コンサベータ(変圧器本体の上部に設置される小型の貯油タンク)内に耐油性のゴム膜を設けて、油と外気を遮断する構造のものです。絶縁油の体積変化に応じて、ゴム膜が膨張・収縮して油の圧力を大気圧に保つので、空気とは接触しない仕組みとなっています。
また、安定したガスである窒素(N2)を使用した方法もあります。
この方法は絶縁油の体積変化を窒素ガスの圧力変化で吸収するもので、「窒素ガス封入方式」と呼ばれています。
このように、特別高圧用の変圧器では、電圧が高く容量が大きいため、安全に使用するための付帯設備が必要であるところが、高圧用とは大きく異なる点です。
みなさんは、コンセントを抜いた時に「火花」を見たことはありますか?
特別高圧の電気設備の場合は、その電圧の高さゆえにとてつもなくこの「火花」が大きくなります。もし人間がコンセントを抜くのと同じようなことが、特別高圧の設備で起こった場合、大災害を引き起こします。
そのようなことが万が一にもおこらないように、活躍するのが「遮断器」です。
遮断器は、電気回路の故障や異常を検知して、速やかに電流を遮断する機器のことで、「油入遮断器」、「真空遮断器」「ガス遮断器」など様々な種類があります。
その中で、現在、特別高圧用の遮断器として主流となっているのが「ガス遮断器」です。
えっ ガスを使うの?それでは「火花」で爆発してしまうのでは??と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ご安心ください。このガスはSF6ガス(六フッ化硫黄)といい、燃えないガスです。さらに、絶縁性能では空気の約3倍、消弧性能は空気の100倍あると言われています。
ガス遮断器は、遮断部分がSF6ガス(六フッ化硫黄)を充填した容器内に設置されたもので、電流を遮断するときに発生する火花を、絶縁性能の高いSF6ガスを高圧で吹き付けて消します。
「火花」が消される原理については、以下のとおりです。
1.閉路(電気が流れている)状態
2.
① 操作ロッドが左方向に動作
② シリンダーによりパッファ室のSF6ガス圧力が上昇
③ ノズルを介し、アークにSF6ガスを可動接触子内径側と固定接触子側の両方向に吹付けて消弧※する
※消弧:アーク放電を消すこと
3.開極後は、固定・可動接触子間はSF6ガスで絶縁を保つ
需要家さまの受電設備で事故が発生した場合、瞬時に遮断できないと電力会社側の遮断器が先に動作し、付近一帯を巻き込んだ波及事故につながるおそれもあり、その影響力ははかり知れません。
そのため、特別高圧用の遮断器には、より一層「火花」を確実に素早く消す性能が求められます。
今回の記事をまとめると以下の通りです。
今回は、特別高圧の電気設備とその特徴についてご紹介しました。
特別高圧の電気設備は、その安全性や性能を維持するために、付帯設備を設けるなど様々な工夫が施されています。
しかしながら、安全・安定した運用を継続していくためには、定期的な点検・診断を実施し、常に正常なパフォーマンスが発揮できているか確認していくことが大切です。
最適な点検・診断で機器の状態をしっかり把握し、特別高圧設備を安全に運用していきましょう。
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