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【電気の基本】受変電設備の耐用年数は?メンテナンスの重要性と長期稼働のリスクも解説!
2024.01.30
系統用蓄電池とは、電気をつくり・届けるシステムである電力系統(発電所・変電所・送電線・配電設備の総称)に直接接続する蓄電池のことです。
系統に接続しているため、購入したり発電したりして貯めた電力を市場に売却することが可能で、中長期的な投資としても活用できることから、国内外で注目されています。
本記事では、再生可能エネルギー比率の向上や市場取引による収益化などのメリットから、導入時の注意点などについて、ポイントをまとめてご紹介します。
系統用蓄電池の導入をご検討の方は、ぜひ本記事をお役立てください。
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この章では、系統用電池の基本的な仕組みや役割についてご紹介します。
導入後にどのようなメリットを得られるのかをより理解していただくために、ポイントをわかりやすくご説明していきます。
系統用蓄電池は、太陽光発電や風力発電などでつくられた電気や、卸電力市場から購入した電気を貯めておくことができます。
通常、電気は貯めておくことができないため、使用量以上に発電した分はそのまま無駄になってしまいますが、蓄電池があれば電気を必要なときまで貯めておくことが可能です。
系統用蓄電池と産業用などの蓄電池との違いは、系統に直接接続されているか否かで、電気を蓄える仕組み自体はそのほかの蓄電池と大きく変わりません。
系統用蓄電池は、系統に直接接続されているため、使用量以上に発電された電気を貯めることで無駄なく電気を活用できるだけでなく、その貯めた電気を市場に売却することもできるのです。
系統用蓄電池の役割は、主に2つあります。
一つは再生可能エネルギーの発電量増加に対応する役割、もう一つは収益を生み出す投資的な設備としての役割です。
一つ目の「再生可能エネルギーの発電量増加への対応」とは、送電容量を超える電気を、系統に直接接続する蓄電池に貯めて有効利用することです。
太陽光発電や風力発電などを大量に建設しても、その発電した電気を運ぶための送配電網(系統)は、一度に送れる容量に限界があるため、送電容量を超える電気は出力制御されてしまいます。一般的に太陽光発電や風力発電設備は、電力需要の少ない地方に建設されるため、そこへ接続する送電線の容量も都心に比べて小さく、発電された電気を無駄なく送るには、送電容量を増設する工事が必要となります。
しかしながら増設工事には、多額の費用と膨大な時間がかかるため、早期に対応できる他の対策を考えなければなりません。そこで、活用が進められているのが系統用蓄電池です。
送電容量の小さい系統に蓄電池を直接接続すれば、送電容量を超える電気が発電される時間帯には蓄電池がその電気を吸収(充電)し、発電量が減少する時間帯に放電することで、再生可能エネルギー発電の電気を無駄なく活用することが可能となります。
もう一つの「収益を生み出す投資的な設備としての役割」とは、蓄電池を使って市場取引を行うことで収益を得る使い方です。卸電力市場では、使用量以上に発電された(余った)電気は安く購入でき、需要が高まる時間帯では高く売れるという市場原理が働くため、この差額を利用して収益を生み出すことができます。
さらに、需要が高まる時間帯に再エネ由来の電気を供給できることから、電力の安定供給やカーボンニュートラルの実現にも貢献することができます。
系統用蓄電池は、国内外を問わず導入が進められています。
本章では、国内外の蓄電池市場の現状、将来の需要拡大と産業への影響についてご紹介します。
日本全国の各電力エリアにおける導入状況(2023年5月時点)は以下のとおりです。
参照:「経済産業省 再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けた取組等について(2023年8月3日)」を元に作成
国内では2022年ごろから系統用蓄電池の導入に向けて動き出すケースが見受けられ、特に「北海道電力エリア」と「九州電力エリア」での導入が大きく進んでいます。今後は、より多くのエリアで盛んに導入がおこなわれていくことが予想されます。
国外でも系統用蓄電池の導入は進んでおり、そのなかでも太陽光発電の導入量が多いアメリカのカリフォルニア州では、2023年6月時点でおよそ500万kW(5GW)の系統用蓄電池が導入済みです。
系統用蓄電池は、脱炭素社会を2050年までに実現するために欠かすことのできない存在です。
太陽光・風力等の再生可能エネルギーは天候等の影響により発電量が大きく変動するため、大量導入が進むと電力系統の安定性に影響を及ぼす可能性がありますが、系統用蓄電池は調整力としての役割を発揮し、電力の安定供給への貢献が期待されています。
経済産業省の「蓄電池に係る安定供給確保を図るための取組方針」によると、蓄電池市場は車載用・定置用ともに拡大する見通しです。
海外市場も含めた数字ではあるものの、2019年の蓄電池の市場規模が約5兆円であるのに対して、2050年には約100兆円の市場になると見込まれています。
市場規模のなかで定置用蓄電池の市場規模は車載用蓄電池の1割程度には過ぎないものの、家庭用・事業用を問わず導入が加速していることや、代替が困難な設備であることから、今後ますます市場規模が拡大すると予想されます。
系統用蓄電池には、さまざまな導入メリットがあります。
ここで重要なポイントになるのが、系統用蓄電池ならではのメリットと蓄電池全般に当てはまるメリットがあることです。系統用蓄電池ならではのメリットは、最初にご紹介する収益化につながるという点です。
蓄電池全般のメリットとあわせて解説します。
系統用蓄電池には、市場取引を活用して長期的な収益を生み出すための投資としての側面があります。
「卸電力市場」の取引においては、国内全体の取引電力量の約4割が日本卸電力取引所(JPEX)で行われており、その取引方法は、24時間を30分ごとに区切った48コマに分割し、1コマごとに電力量(kWh価値)の売買を行っています。
このため、太陽光の発電量が増える快晴の昼間など電気の余る時間帯では安く電気を購入でき、夕方など発電量が減少し需要が増加する時間帯には高く電気が売れるため、この差を利用して収益を上げる(アービトラージ)ことができます。
経済産業省が2022年に発表している「直近の卸電力市場の動向について」によると、2021年9月から2022年4月までの約1年間で日平均が最も安いのが9月の13.0円であるのに対して、12月~3月の80.0円が最高額です。
売買のタイミングさえ間違えなければ、安定的に利益が見込まれます。
上記のほか、電力供給がひっ迫した際に、その調整力(ΔkW価値)を提供して収益を得る「需給調整市場」や、将来の供給力(kW価値)を取引する「容量市場」などがあります。これらの市場取引で系統用蓄電池の余剰分を活用することで、電力量(kWh)と供給力(kW)の両方で利益を生み出すことができます。
蓄電池を活用することで、再生可能エネルギーを無駄にすることなく、有効利用できます。
電気は、蓄電池を使用しない限りは貯めておくことができないので、例えば太陽光発電の場合、天気のよい昼間につくられ余剰となってしまった電気は、使われないまま捨てられてしまうケースが大半です。
しかし、蓄電池を使用することで余剰となった電気を貯めることができ、それを発電量が低下する夜間に蓄電池から放電することで、再生可能エネルギーを有効利用できます。
蓄電池を活用してピークカットを行うことで、電気代の基本料金を抑えることができます。
ピークカットとは、使用量の最も多い時間帯の使用電力量(最大デマンド)を削減することです。
電気料金の基本料金は、過去1年間におけるピーク時の電力使用量に基づいて算出されるため、電力使用量の少ない早朝・夜間に電気を蓄電池に貯めておき、昼間にその貯めた電気を使用することで、1日の電力使用量を減らすことなく、電気料金を下げることが可能です。
ピークカットによる電気代の削減効果は、使用電力量のピークが比較的短時間の企業ほどメリットを実感できるでしょう。
蓄電池の導入は、BCP対策にも効果的です。
BCPとは、災害などの緊急事態において、企業や団体がコア事業を継続するための計画のことを指します。BCPの策定と実施は、企業や組織がリスクに適切に備えるために不可欠なものですが、電力の確保はその重要な施策の一つです。
事業の継続や従業員の安全確保のためには、一定の電力が必要であり、日本では、72時間以上の非常用電源の確保が推奨されています。自社での電力の使用量や蓄電池の容量にもよりますが、蓄電池容量の一定の割合を非常用として確保しておくとよいでしょう。
系統用蓄電池には、導入・利用時に注意すべき点もあります。
この章では、系統用蓄電池の2つのデメリットをご紹介します。
系統用蓄電池などは大型の蓄電池に該当するため、導入コストは高額になります。
実際にかかるコストは蓄電池を導入する場所・蓄電池の種類・蓄電容量などによって異なるものの、概ね費用の内訳は以下のとおりです。
上記のとおり、費用は蓄電池の種類や容量、仕様等により大きく変動するため、詳細は個別の見積もり確認が必要です。
近年では、設備の価格が下がってくる傾向がみられ、また補助金制度も充実してきていますので、トータルでの最終コストを確認して中・長期的にシミュレーションされるとよいでしょう。
系統用蓄電池は、故障リスクや部品の劣化に備えるために、専門業者に継続的なメンテナンスを依頼する必要があります。
メンテナンスがされていなかったり不十分だったりする場合は、大きな不具合や二次災害にも発展しかねません。
メンテナンスについては、その都度契約するよりも、導入時に保守メンテナンス契約を結んだ方がスムーズです。系統用蓄電池を導入する際には、保守メンテナンスプランも確認のうえ、検討されることをおすすめします。
系統用蓄電池を対象として、国の補助金制度が2021年度から毎年公募されるようになりました。
2023年度はすでに公募が終了していますが、以下は2023年度に公募がおこなわれた補助金制度の内容です。
【対象の設備】
※第2次公募は水電解装置のみが対象
【対象となる費用】
補助の対象は「設計費・設備費・工事費」であり、詳細は以下のとおりです。
区分 | 補助率 | 補助上限額 (1申請あたり) |
||
蓄電システム |
①新型蓄電システム導入に関わる下記の設計費・設備費・工事費 |
1/2以内 | 20億円 | |
上記以外の蓄電システム導入に関わる設計費・設備費・工事費 | ②電力系統側への定格出力は 1,000kW以上10,000kW未満 |
1/3以内 | 10億円 | |
③電力系統側への定格出力が 10,000kW以上 |
1/2以内 | 20億円 | ||
水電解装置 | 設計費・設備費・工事費 | 2/3以内 | 予算の範囲内 | |
【公募期間】
※2023年度の公募はすでに終了しています
参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ「令和5年度 系統用蓄電池等導入支援および実証支援事業」
今後も、国は系統用蓄電池の導入支援に力を入れていく方針のため、関心がある方は補助金制度について事前に確認しておきましょう。
系統用蓄電池には様々な種類がありますが、長期にわたって効率的に運用をしていくために、詳細をしっかりとチェックしたうえで導入に踏み切りましょう。
本章では、系統用蓄電池を選ぶ際のポイントを3つご紹介します。
蓄電池を選ぶ際には、まずどんな使い方がメインとなるのか、目的を明確にしてから選んでいきましょう。たとえば、投資活用をする場合には、充放電の効率がよく、寿命の長いものを選ぶことが重要です。
蓄電池本体の比較では、やはり価格面が気になるところですが、蓄電容量や定格出力、充放電回数は、用途に応じた最適な蓄電池を選ぶ上でチェックしたいポイントです。
また、蓄電池は品質が悪いと最悪の場合、火災に発展することがあるため、品質面や耐火構造などの延焼防止対策の確認を行うとともに、導入後の故障や不具合などのトラブルに備えて、保証内容を確認しておくことも大切です。
求める性能について、依頼する施工会社と十分に相談しながら蓄電池選びを進めていくことをおすすめします。
蓄電池を長期にわたって効率的に運用するには、本体の性能だけでなく制御システムである「BMS」にも着目する必要があります。
「BMS(Battery Management System)=バッテリー制御技術」のことであり、電池を安全かつ効率的に運用するために充・放電を制御するシステムのことです。
蓄電池は、新品であっても容量や残量にバラつきがあります。
このバラつきをいかに効率よくバランスさせるかが、重要なポイントであり、この点を左右するのが「BMS」です。
バラつきをうまく制御ができないと、満充電できなかったり、最後まで使い切ることができないため、蓄電池の性能を最大限に発揮できないだけでなく、寿命自体も短くしてしまいます。
BMSの制御方式は蓄電池の寿命に大きな影響を与えるため、蓄電池の性能だけでなくBMSの性能も確認し、長寿命化が実現可能かを見極めることが重要といえるでしょう。
蓄電池を導入する際は、施工会社の実績も重要です。
系統用蓄電池は電力系統へ直接接続することが前提であるため、系統連系にともなう電力会社からの要求に対応できるノウハウや、実績がある施工会社に依頼する必要があります。
施工に対しては、安全面に配慮することはもちろん、施工品質なども見極める必要がありますが、その他の押さえるべきポイントの例をいくつかご紹介いたします。
蓄電池の設置にあたっては、電力会社(一般送配電事業者)の系統へ連系する要件として、単独運転を防止する対策を講じなければなりません。
これは万一、災害等で系統が停電した場合に蓄電池から電気が供給されてしまうと、公衆感電、電気機器の損傷、消防活動への影響、事故探査・除去作業員の感電などのおそれがあるためです。
停電が発生した際は、停電となったことを確実に検出し系統から切り離さなければならない一方で、その検出感度を高めすぎると平常時の電圧や周波数の変動で不要な動作をするおそれがあるため、「保護リレー」の組み合わせや整定などのノウハウが必要となります。
蓄電池の設置工事を行う際は、系統連系の対応技術と豊富な実績のある施工会社に依頼することをおすすめします。
主に産業用の蓄電池を導入する際に押さえておくべきポイントとして、新設で蓄電池を設置する際、「既存のPV(太陽光発電)とも連携したい」「EV(電気自動車)を後から連携したい」などのニーズがある場合、各機器のメーカーがそろっていないと制御できない、もしくは現在使用のEMS(エネルギーマネジメントシステム)が対応していないなど、トータル的にエネルギーマネジメントをしたくても実現できない場合があります。
蓄電池を導入する際は、システム全体に対する知見やノウハウのある施工会社かどうか確認しておくことも重要です。
2022 年5月の電気事業法改正において、電力系統に直接接続する1万kW以上の大型蓄電池は蓄電所として「発電事業」に位置付けられており、系統用蓄電池は、今後の電力の安定供給と再エネ導入の加速化に欠かせないものとなっています。
国内でも導入を検討している企業が増えており、今後はより系統用蓄電池の需要拡大が見込まれています。
国からの支援施策や補助金もあり、初期導入費用が抑えられるようになってきましたので、各種制度を活用して系統用蓄電池の導入を検討されてはいかがでしょうか。
当社では、系統用蓄電池の選定から設置工事、系統連系支援、設置後の保守メンテナンスまで、最新技術と豊富なノウハウによりワンストップでご提供いたします。系統用蓄電池の導入に関するお困りごとがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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