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停電や設備トラブルが起きたら?事故復旧対応力を身につける方法
2023.01.16
近年、日本各地で震度4以上の地震の頻度が高く、施設・設備に対して不安を感じる方も多いのではないでしょうか?地震大国の日本では、いつどこで地震が発生してもおかしくはありません。
事業の継続を支える重要な設備を維持管理していく上で、欠かすことができないものが定期的な点検ですが、設備管理者のご不安を解消するためには、ニーズに沿った必要十分な点検内容であることが大切です。
今回は、お客さまのニーズに寄り添った煙突点検の事例をご紹介いたします。
開発した点検装置はもちろん、煙突の点検方法も詳しくご紹介していますので是非最後までお読みください。
今回の煙突点検のきっかけは、以前より当社で受変電設備点検をさせていただいているお客さまからのご相談でした。清掃センターの設備管理をされているお客さまは、近年地震が多発している事もあり、見えない煙突内部の健全性を心配されていました。そこで、一度キチンと確認しておきたいと、煙突点検の実績がある当社へお話を頂きました。
当社では、これまで火力発電所、大型ホテルのボイラー、排水ポンプ場、廃棄物処理場などの煙突点検を実施してきましたが、煙突内径が大きい物でφ5mと大型の煙突が中心でした。しかし、今回の点検対象となる清掃センターの煙突は、内径がφ1.4mと小さく、さらに高さ100mの長距離煙突であり、当社では前例のないものでした。
従来の大型煙突に対応した装置を使用した点検では、オーバースペックで高コストとなってしまう事が懸念されたため、私たちは、お客さまのお悩みを解消できることはもちろん、できるだけ低コストで実施できる点検方法と装置を模索しました。
小口径で長距離の煙突を点検するために必要な条件は何なのか。私たちはお客さまのニーズをもう一度整理しました。
従来の装置は、大型煙突に対応するため、対象物までの距離が離れていても、鮮明に内部状況を撮影できる事が求められました。
そのため、ハイスペックで重いカメラ装置を用いており、それに付随する昇降装置なども大掛かりとなっていました。
今回のお客さまニーズは内部状況と溶接部の亀裂有無の確認が最も重要なポイントであり、そのニーズを満たす必要十分な装置の開発が望まれました。
そこで私たちは「煙突内径に合わせた点検装置の小型化」「実際のニーズに合わせた点検内容の合理化」に重点をおいた、新しい煙突点検装置の開発へと舵を切ったのです。
何度も試行錯誤を重ねて、いよいよ“小口径&長距離”煙突点検専用の小型カメラ装置の開発が実現します。現場の状況とニーズにマッチした当社オリジナルの装置です。
そして無事、清掃センターの煙突の健全性を確認することができました。
ここからは、これまで大型煙突の点検業務において採用してきた「大型構造物点検装置」と、今回開発した「煙突点検専用カメラ装置」との比較をご紹介していきます。
従来の大型構造物点検装置では、重量25kgのカメラ装置を使用していました。
一方で今回は、装置の軽量化、搬入機材点数の減量化、および仮設の簡素化を図るため、専用のカメラ装置を開発しました。重量はわずか5kgです。
総重量で比較すると、従来の大型構造物点検装置では、機材点数14点、総重量282kgであるのに対し、新しいカメラ装置では、機材点数40%削減、重量70%削減と、点検機材の簡素化と減量化にも大きく貢献できました。
[機材の重量比較]
機器名称 | 従来の装置 | 新しく開発した装置 |
カメラ装置一式 | 25kg | 5kg |
制御システム一式 | 20kg | ー |
モニター | 7kg | 7kg |
電源制御ケーブル | 30kg | ー |
ウインチ類 | 113kg | 5kg |
距離計 | 7kg | 7kg |
そのほかの資機材 | 80kg | 35kg |
合計 | 282kg | 59kg |
従来の点検装置では、煙突の先端から、ワイヤーで吊ったカメラ装置を1mピッチで降下させ、カメラを水平方向に360度回転させながら撮影と点検を同時に行う方法を採用していました。
一方、新しく開発したカメラ装置の点検方法は以下の通りです。
①固定した3本のフレームに、水平方向180度の範囲を録画するためのカメラ4台と照明8台、上部を監視するためのカメラ1台と照明1台をそれぞれ固定します。
②続いて、煙突内の最下部で点検装置を組み立て、プーリウィンチとリードロープを使用し一気に上昇させながら煙突内を撮影します。これを左右半面ずつ行い、煙突内部を360度撮影します。
③最後に、撮影した映像を点検者が事後点検し、報告書を作成するという流れです。
このように、従来の1mずつ撮影しながら点検する方法から、一気に上昇して撮影し、事後に点検する方法へ変更したことにより、大幅に作業時間を短縮することができました。
また、煙突内部状況と溶接部亀裂の確認という点検のマスト要件は十分にクリアし、お客さまにご満足いただける点検内容となりました。
従来の大型構造物点検装置を使用した点検では、合計10,180分・人/回を要していたのに対し、今回の装置開発の結果、合計4,880分・人/回と、作業全体の効率も高めることができました。
[作業時間の比較]
作業内容 | 従来の装置 | 新しく開発した装置 |
資機材搬入 | 2,880分 | 1,040分 |
仮設設置 | 1,260分 | 880分 |
煙突点検 | 2,680分 | 1,600分 |
仮設撤去 | 480分 | 320分 |
資機材搬出 | 2,880分 | 1,040分 |
合計 | 10,180分 | 4,880分 |
また、点検業務に必要な人員数も削減できました。
これらは、お客さまの点検費用低減にももちろん貢献できる部分です。
従来の装置 | 新しく開発した装置 | |
作業人員 | 6名 | 4名 |
煙突は使用用途により材質やサイズがさまざまありますが、それにあわせてお客さまのニーズもさまざまです。
煙突設備を維持管理していく上で、定期的な点検は欠かすことのできないものですので、設備管理者の方のご不安を解消するためにも、当社では設備やお客さまニーズの把握に努め、そのニーズにあわせた点検や診断となるよう検討をさせていただいております。
煙突設備の健全性にご不安をお持ちの方や、診断・点検をご検討中の方はぜひご相談ください。